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「破格」  岡山県立博物館

かれこれ30年も前の事ですが、東京根津美術館のお茶室をお借りして、備前天下の名器三角花入とご対面をさせてもらった。それは池内美術(株)の池内克也社長の計らいで

“備前焼を焼くならこれを見ておけ”と持ち主に話し、芦屋から東京まで持参願い水戸幸の大旦那と4人でつくづく眺めた。

不思議なことに、手で持ち上げて目に近づけると何か気分が悪くなる。手から離すと気分が治る。最初は何が何だか全然判らなかった。

正直言って私はこの時まで古備前の茶陶は知らなかった。私の頭の中には古備前の壺やすり鉢か金重陶陽や藤原敬の現代茶陶でしかなかった。

私の窯で焼き上がってくるものはどちらかと言えば備前の壺の様であった。池内克也氏は、私にその違いを教え込みたかったのだろう。

その後、畠山記念館の重文緋襷水指、そして柑子口花入、徳利の五郎と花子。又暫くすると太郎庵、大芋虫、透かし鉢、三日月の鉢、名古屋にある苔清水等を見た。日本最高の古備前の名品で見ていないものは、金沢にある重文の「破れ家」ぐらいである。

 

ここまで見て、先の気分が悪くなったり、目まいを感じた訳が分かった。それが三点で構成されているため、その器の回りの空間が回転しているためなのではないかと考えている。

 

 今その名品達が岡山県立博物館に集合している。残念なことだが畠山記念館と金沢のものは見ることが出来なかった。

そしてこの展示作品は過去のあらゆる出版物にも掲載がゆるされる事のなかった全ての角度からの写真が撮られ、参考資料としてカタログになっている。

これは県立博物館の若い学芸員、重根弘和氏の努力と向う見ずの表現だと思う。

 

 

岡山県立博物館

「破格」 

2015年9月18日~11月8日