青春時代 2
私の一番苦労したのが缶詰の空き缶であった。
なぜだか今もって分からないのだが、この空き缶が山と集まる場所があった。
山のように野積みされた空き缶は、雨水が溜まり腐ってたまらなく臭い。
これをジョウレン(竹製品)ですくって荷台に乗せていく。荷台へ上げる時にこの水が否応無く胸から下へ流れ出てかかる。
これはたまらない作業だった。
密入国して来た彼も日本語がすぐ話せるようになった。彼もとても思いやりのある優しい人だった。
彼と働く事は私の人生の考え方を変えていくような気がした。
なぜかまだ見たことの無い韓国に親しみを感じていた。
選別されたクズは商品として一定の量に固め、港の荷物船で積み出す。
当時は田舎の村から色々なものが出てきた。
ある時鉄クズの中に太刀の錆びたのが出てきた。私は子供の頃から家にあった刀で遊んでいたので多少興味があった。
その錆びた太刀は柄元からいきなり頭にかぶさってくるような反りで、豪壮なものだった。おそらく鎌倉時代の備前の太刀だったと今も忘れられない。どこかで溶かされて何かに成っているだろう。
最近東京からの新幹線の中で彼と偶然会った。
今彼は再生資源の大会社となり、町の有力者になっていた。