青春時代 4
中学時代、柔道と演劇をやっていた朝鮮人の英雄が、その頃新宿のBarで働いていた。
彼を訪ねて行き、「私も働きたい」 と言ったが、彼に怒鳴りつけるように
「お前の来る所じゃない!」
と言われ追い返された。
彼はその後北朝鮮へ帰って行った。
池袋から一つ目が豊島園、二つ目が椎名町。
椎名町のトキワ荘に美術部の後輩の篠宮が一階に住んでいた。
篠宮君は父が確か公務員で、我が村の旧家の息子だった。
私は彼を訪ねてトキワ荘へ行った。
「何か働き口はないか?」
と言ったが、彼は実に冷静に帰ってくれと言った。
今になってテレビで見て驚いた。あの時二階では、赤塚不二夫、藤子不二雄、石森章太郎 等がマンガの制作活動をしていたのだ。
私は世間知らずの田舎者だった事に自分でもあきれる。今もあまり変わらないが・・・。
あのトキワ荘も今は記念碑のみらしい。
居候先の従兄弟夫婦の仲が少しずつおかしくなってきた。それが私のせいだった事は今になって良く判る。
私は居候がやりずらく、従兄弟は帰って来なくなった。
その後、郷里の仙台へ帰った従兄弟と亭主。
今年私が地震見舞いに行っていたとき、急逝した。
皮肉にもあの時の迷惑の侘びを言いたくて電話をして話しかけた時だった。