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青春時代 5

モモヒキは後前反対に穿くと違和感で分かる。

今日びは、靴下を履いたみたいに何も感じない。

立小便の時に始めて分かる。

今日一日は小便の度に腹が冷えた。

 

東京での話しに戻るが、

 

池袋の職業安定所へ行った。

鉄の窓枠を製作している工場のトラック運転手の仕事があった。

面接に行った。

早速明日の朝から勤めてくれとの返事。

初出勤の朝は、小雨が降っていた。

国鉄の忘れ物即売会で20円で買った傘をさし、病院のトイレから履いて帰った自動車のタイヤを付けたツッカケ下駄を履いて、古着屋で100円で買ったレインコートを着て出勤した。

事務所で挨拶をしたら、その足元ではと古いゴム長を出してくれた。

担当が書類を持って工場まで案内してくれ、書類を渡された。

見ると、銀座の何とかビルの工事現場の住所のみが書いてあった。

私は助手がいるものと勝手に思い込んでいた。

まさか私一人で運転して行くとは夢にも考えていなかった。

私は工場を出て右へ行くのか、左へ行くのか、自分の今いる場所すら東京のどの辺りか分からなかった。

トラックの荷台には鉄の窓枠が山と積んであった。

私は慌てた。

兎に角、逃げることに決めた。

現場事務所を隠れて見ていたら人が居なくなった。

その隙にゴム長をツッカケ下駄に履き替えて人に見つからないように、頭を低く、背を丸め、下駄音を気にして通りまで逃げて来た。

雨は止んでいた。

後を振り返り、人目を気にしながら町の角を曲がった。

「あっ、傘を忘れて来た!」

しばらく考えようと思ったが、工場からトラックが出て行かなかったら気付かれてしまうのでは?と急いで傘を取りに工場へ引き返した。

まだ現場事務所に人は居なかった。