青春時代 6
背に腹は変えられず、職安へ来た。
先日の担当がいない場所へ並んだ。
今度は、藤巻塗装という工場へいった。各種メーターの文字盤専門の塗装をやってた。
私の仕事は真鍮の円盤に下地をつけてあるものを、水ペーパーに黒いゴムの当てに巻いて研ぐ。立って、膝の高さぐらいに厚い板が長く設置してあり、その50cmぐらい上に水道の配管が板に沿って通っている。
そのパイプから四六時中水が細く一筋落ちている。その下でほとんど研ぎ落として又下地付けに回す。
この作業は、一日中昼の食事以外はつづく。
私は昼食は金が無くて食べなかった。
従兄弟が、志村前野町に下宿を探してきた。
朝夕食事付きで確か七千円だったと思う。
下宿は斎藤さんと言って、広島出身で娘と三人家族で一階に住んでいた。
まだ美術研究所へ行く暇も金も無かった。
休まず1ヵ月働いて九千円には届かなかった。下宿代と電車賃を取ったら、ほとんどが残らなかった。
お袋が米と大豆を炒って砂糖をまぶしたものを一斗缶に一杯詰めて送ってくれた。
親父に隠れて送ってくれた。
お袋の精一杯の気持ちだったのだろう。